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本学教員の学術論文がアメリカ化学会発行「Chemistry of Materials」誌の表紙に選出されました

更新日:2025.05.30

大学院工学研究院 基礎科学研究系の田中 将嗣准教授とグラスゴー大学、産業技術総合研究所、および広島大学との共同研究成果が、アメリカ化学会(ACS)の論文誌 「Chemistry of Materials」に掲載され、Supplementary Cover Artに選出されました。論文は2025年5月10日にオンラインで公開され、5月27日号でカバーアートとともに刊行されました。

この論文では、様々な実用材料として使用されている窒化ジルコニウム(ZrN)の新しい合成法を報告しています。層状窒化ハロゲン化物という化合物の一種であるZrNClを出発物質として使用し、学内で整備された超高純度アンモニア反応炉を用いて酸素の混入を限りなく抑えた状態で脱塩素反応を行うことで、層状の形状を保ったままZrNのバルク合成に成功しました。ZrNは岩塩型と呼ばれる結晶構造を持つ3次元性の化合物ですが、これを2次元性の層状形状に変えることができたことは特異な特徴です。

さらに、アンモニアとの反応条件を適切に調整することで、岩塩型構造を保持しながら窒素を過剰に含むZrNの合成にも成功しました。従来、ZrNは窒素の量が減少して非化学量論比の化合物となることがよく知られていますが、窒素を過剰に含む状態でバルク合成に成功したのは、他の岩塩型窒化物を含めても初めての例です。また、侵入型窒化物ではなく、Zrの一部欠損によって窒素過剰状態が実現している点も特異な特徴です。

また、ZrNは低温で超伝導体となることも知られていますが、この研究で得られたZrNも窒素過剰領域で超伝導を示し、窒素量に応じた転移温度の変化がドーム状になることが明らかになりました。転移温度の超伝導ドームは、銅酸化物や鉄系超伝導体といった、ごく限られた高い転移温度を示す超伝導体においてのみ観察される性質です。窒素量で電子およびホールドープ量が調整できる例は他に存在しません。ZrNのような古くからよく知られた実用材料において、これらの新たな性質が発見されたことは極めて珍しい例です。

この論文は、国際共同研究の強化を目的とする九工大の海外研修制度を通して得られた成果です。

掲載号「Chemistry of Materials」 2025, 37, 10, pp. 3747–3756

【選出対象】

共著者 田中 将嗣 (九州工業大学 大学院工学研究院 基礎科学研究系 准教授)
藤岡 正弥 (産業技術総合研究所 マルチマテリアル研究部門 主任研究員)
Duncan H. Gregory (University of Glasgow, School of Chemistry, Professor)
犬丸 啓(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 先進理工系科学専攻 教授)
発表題目 「Bulk Synthesis and Superconductivity of Rock Salt-Type Nitrogen-Rich, Zirconium-Deficient Nitrides, Zr1-xN」



選出されたカバーアート

選出されたカバーアート


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